RPEとRIRとは何か?
ウエイトトレーニングにおいて、トレーニング強度を測定し管理することは継続的な進歩に不可欠です。RPE(Rate of Perceived Exertion)とRIR(Reps In Reserve)は、1RMのパーセンテージよりも直感的で柔軟な強度調整の方法です。
RPEとRIRを習得すると、次のことが得られます。
精密な強度コントロール:その日のコンディションに合わせて自動調整
オーバートレーニングの予防:過度な疲労の蓄積を防ぐ
最適化された進歩:アンダートレーニングとオーバートレーニングの間のバランス
柔軟なプログラミング:1RMテストなしでも効果的なトレーニング
RPE(Rate of Perceived Exertion)
RPEスケールとは?
定義:主観的に感じる運動強度を1~10のスケールで測定
RPEスケールはボルグ(Borg)スケールに由来し、マイク・タシェラー(Mike Tuchscherer)によってパワーリフティングとウエイトトレーニングに適用されました。
10段階のRPEスケール
RPE 10:最大努力、RIR 0 - もう1回もできない、限界
RPE 9.5:ほぼ最大 - 完璧なフォームでは無理、フォームが崩れれば可能かも
RPE 9:非常にきつい、RIR 1 - 確実にあと1回可能
RPE 8.5:きつい - 1回は確実、2回は不確実
RPE 8:きつい、RIR 2 - 確実にあと2回可能
RPE 7.5:中程度~きつい - 2回は確実、3回は不確実
RPE 7:中程度の強度、RIR 3 - 確実にあと3回可能
RPE 6:やや適度にきつい、RIR 4 - 余裕あり、あと4回可能
RPE 5:普通、RIR 5+ - 楽、まだ多く残っている
RPE 1-4:非常に軽い - ウォームアップ程度
RPEの使用例
例:スクワット5回 @ RPE 8
5回を完了した後
完璧なフォームであと2回できる状態
3回は不可能
これがRPE 8(RIR 2)
RIR(Reps In Reserve)
RIRとは?
定義:セット終了時に残っている反復回数
RIRはRPEの逆の概念ですが、より直感的です。「あと何回できたか?」という問いに答える方法です。
RIRスケール
RIR 0:もう1回もできない(RPE 10) - 1RMテスト、ピーキング
RIR 1:あと1回残っている(RPE 9) - 強度ブロック、高重量
RIR 2:あと2回残っている(RPE 8) - 筋肥大、筋力トレーニング
RIR 3:あと3回残っている(RPE 7) - ボリュームブロック、技術練習
RIR 4+:あと4回以上残っている(RPE 6以下) - ウォームアップ、ディロード
RIRの使用例
例:ベンチプレス8回 @ RIR 2
8回を完了
あと2回できる重量を選ぶ
合計10回できる重量で8回だけ行う
これがRIR 2(RPE 8)
RPE対RIR:どちらを使うべきか?
RPEの利点
より細かい調整:0.5単位で調整可能(RPE 8.5)
標準化されている:パワーリフティングのコミュニティで広く使われている
研究に基づく:科学的な文献が豊富
アプリ対応:ほとんどのトレーニングアプリがRPEを採用
RIRの利点
より直感的:「あと何回残っているか?」が理解しやすい
初心者に優しい:スケールがシンプル
即時的:セット直後に判断できる
具体的:明確な数値で表現される
おすすめの使い方
初心者:RIRから始めて概念を理解する
中級者:RPEに切り替えてより細かく調整する
上級者:両方を使い、状況に応じて適用する
RPE/RIRを正確に使う
1. キャリブレーション(補正)
目的:主観的な認識と実際の能力を一致させる
方法:
限界テスト:
軽い重量から始める
実際に限界に達するまで行う
あと何回できると思っていたかを記録する
動画分析:
セットを動画で撮影する
バーの速度の低下を観察する
最後の反復の難しさを確認する
定期的な再補正:
4~6週間ごとに限界テスト
認識と実際の差を確認する
必要に応じて調整する
2. バーの速度で判断する
バーの速度とRPEの関係:
RPE 6-7:バーが速くスムーズに動く
RPE 8:バーの速度がやや遅くなるが、まだコントロールできている
RPE 9:バーの速度が明らかに遅い、きつい
RPE 10:バーが止まる、または失敗する
ヒント:バーの速度は客観的な指標であり、主観的なRPEを補正するのに役立ちます。
3. 反復範囲に応じたRPEの適用
低回数(1~5回):
RPEの判断がより簡単
各反復が明確に区別できる
推奨:RPE 7-9
中回数(6~12回):
RPEの判断が適度
最も一般的な範囲
推奨:RPE 7-8.5
高回数(15回以上):
RPEの判断が難しい
筋肉の灼熱感と実際の能力の区別が難しい
推奨:RIR 3-5を使う
4. よくある間違い
間違い1:RPEの過大評価
問題:実際よりもきついと感じる
原因:不快感と実際の疲労を混同する
解決策:定期的な限界テストで補正する
間違い2:毎セットRPE 10
問題:継続不可能、オーバートレーニング
原因:「きついほど良い」という誤解
解決策:プログラムされたRPEを守る
間違い3:一貫性の欠如
問題:同じRPEが日によって異なる
原因:基準の欠如、感情的な判断
解決策:明確な基準を設定し、記録を残す
間違い4:ウォームアップでRPEを使う
問題:ウォームアップがきつくなりすぎる
原因:すべてのセットにRPEを適用する
解決策:ウォームアップは固定重量/パーセンテージを使う
トレーニング目標別のRPE/RIRガイド
筋力発達(Strength)
目標:最大筋力の向上
反復範囲:1~5回
推奨RPE:7-9
推奨RIR:1-3
セット数:3-6セット
例:スクワット5x3 @ RPE 8、デッドリフト3x5 @ RIR 2、ベンチプレス4x2 @ RPE 9
筋肥大(Hypertrophy)
目標:筋量の増加
反復範囲:6~12回
推奨RPE:7-9
推奨RIR:1-3
セット数:3-5セット
例:ベンチプレス4x8 @ RPE 8、ロウ3x10 @ RIR 2、レッグプレス4x12 @ RPE 7.5
筋持久力(Endurance)
目標:持久力の向上
反復範囲:15~20回以上
推奨RPE:6-8
推奨RIR:2-4
セット数:2-4セット
例:レッグエクステンション3x20 @ RIR 3、ケーブルロウ3x15 @ RPE 7
技術練習(Skill Work)
目標:動作パターンの完成
反復範囲:3~5回
推奨RPE:5-7
推奨RIR:3-5
セット数:5-10セット
例:スナッチ8x3 @ RPE 6、フロントスクワット6x3 @ RIR 4、パワークリーン10x2 @ RPE 7
RPEベースのプログラムの作り方
週間構成の例 - 線形ピリオダイゼーション(12週間)
1~4週:8x4 @ RPE 7 - ボリュームの蓄積
5~8週:6x4 @ RPE 7.5-8 - 強度の増加
9~11週:3-5x5 @ RPE 8-9 - ピーキング
12週:ディロード @ RPE 5-6 - 回復
日々の変動(DUP)
週3回のトレーニング
月曜 - ボリューム:スクワット5x8 @ RPE 7、ベンチプレス5x8 @ RPE 7
水曜 - 中程度:スクワット4x6 @ RPE 8、ベンチプレス4x6 @ RPE 8
金曜 - 強度:スクワット5x3 @ RPE 8.5、ベンチプレス5x3 @ RPE 8.5
自動調整(Auto-regulation)
概念:その日のコンディションに応じて重量を自動調整する
方法:
目標設定:スクワット5回 @ RPE 8
最初のセットを実行:100kg x 5回
RPEを評価:
RPE 7だった → 重量を増やす(105kg)
RPE 8だった → 維持する(100kg)
RPE 9だった → 重量を減らす(95kg)
次のセットを続行:調整した重量で
RPEと1RMパーセンテージの比較
おおよその換算表
1回:RPE 7=87%、RPE 8=92%、RPE 9=97%、RPE 10=100%
3回:RPE 7=81%、RPE 8=86%、RPE 9=91%、RPE 10=95%
5回:RPE 7=76%、RPE 8=81%、RPE 9=86%、RPE 10=89%
8回:RPE 7=70%、RPE 8=76%、RPE 9=81%、RPE 10=84%
10回:RPE 7=67%、RPE 8=73%、RPE 9=78%、RPE 10=80%
注意:この表は一般的なガイドにすぎず、個人差が大きいです。
高度なRPEテクニック
1. RPE範囲の使用
方法:スクワット5回 @ RPE 7-8
コンディションが良ければRPE 8まで押し上げる
コンディションが悪ければRPE 7で止める
柔軟性と構造のバランス
2. トップセット + バックオフ
構成:
トップセット:1x5 @ RPE 9(最も重い重量)
バックオフセット:3x5 @ RPE 7-8(重量を減らす)
利点:高強度とボリュームの両方を確保できる
3. RPEピラミッド
構成:セット1:RPE 7、セット2:RPE 7.5、セット3:RPE 8、セット4:RPE 8.5、セット5:RPE 8(バックオフ)
4. クラスターセット
方法:3x(2+2+2) @ RPE 9
2回行う → 15秒休憩 → 2回行う → 15秒休憩 → 2回行う → セット完了
各ミニセットがRPE 9
結論
RPEとRIRはトレーニング強度を科学的に管理する強力なツールです。1RMのパーセンテージよりも柔軟で直感的であり、その日のコンディションを反映できます。
要点:
RPEは主観的な強度、RIRは残りの反復回数
定期的なキャリブレーションで精度が向上する
目標に合ったRPE/RIRの範囲を使う
バーの速度とフォームで客観的に確認する
一貫した記録でパターンを把握する
実践への応用のヒント:
初心者:RIR 2-3から始める
中級者:RPE 7-8.5の範囲を活用する
上級者:自動調整と高度なテクニックを適用する
すべてのレベル:RPE 10はピーキング/テストのときだけ!